ChatGPTをはじめとする生成AIの登場により、私たちの仕事のあり方は大きく変わり始めています。
建設業界でも、図面チェックの補助や報告書の下書き、現場情報の整理など、AIの活用機会は着実に広がりつつあります。
一方で、こうした技術に対し、どこか漠然とした不安を感じる方も少なくないかもしれません。
「AIに頼りすぎると、人間は考える力を失ってしまうのではないか」――そんな問いです。
たしかに、自動車や電卓、カーナビなど、私たちの生活を便利にした道具は、それと引き換えに一部の身体的・知的な能力を使わなくする側面もありました。
けれど、その代わりに人間は、運転中の危機管理能力や情報の読み解き方など、新しい力を自然と習得するようにもなりました。
同じように、AIも「思考を奪う道具」ではなく、“別の考える力”を引き出す存在であると捉えることができるのではないでしょうか。
私たちは日々の業務に追われる中で、次第に「なぜこのやり方なのか」「もっと良い方法はないか」といった“問いを立てる力”を発揮する機会を失いつつあります。
また、物事を異なる視点から見る“多角的な視点”も、忙しさの中で置き去りにされがちです。
そんなとき、AIは情報を整理し、別の角度からの仮説や選択肢を提示してくれます。
それはまさに、“無意識のうちに眠っていた知的探求心”を呼び起こし、思考の幅と深さを取り戻すきっかけとなるのです。
たとえば、AIが議事録や報告書を自動で下書きしてくれれば、その分、私たちは「より良い施工とは何か」「どうすればチーム全体が動きやすくなるか」といった本質的なテーマに時間と力を注げるようになります。
重要なのは、AIに任せる“範囲”ではなく、それを通じて私たち人間が何を考え、どう決断していくかです。
AIに思考を任せるのではなく、AIを通して思考を磨く。
社会や技術がどれだけ進歩しても、「問いを立てる力」や「多角的な視点」を持つのは、最終的には人間です。
そしてその力こそが、より良い現場、より良い仕事、より良い未来を切り拓いていくのだと、私たちは考えています。